CANON FD 35-70mm F2.8(22)-3.5 S.S.C

CANON FD 35-70mm F2.8(22)-3.5 S.S.C

アサヒカメラ 1990年5月号の「Dr.オグラの写真進化論」にこのレンズの生い立ちを記した記事がある。

副題が「ショートズーム17年の曲折」とある。

内容をかいつまんでみると…

当時('73)ニコンの43-86mmのショートズームが売れに売れていた。

CANONとしてこれを追い越すべくショートズームの開発を延々と行っていた。

当時は光学補正式3群ズームが主流であり、43-86mmも例外ではなかった。

CANONもおそらく光学補正式を研究していたであろうし、またレベルを甘くすれば直ぐにでも商品化できたが敢えてそれをしなかった。

そして、10年の苦節の末に機械補正式2群ズームとしてこのレンズが生まれ、当時のズームでは考えられない小ぶりなレンズでまた六切りでもはっきりと差の分かるほど優秀な描写だった、とのこと。

 

光学補正式はカムが作りやすいがピント誤差を生みやすい、一方の機械補正式2群ズームは精密な非直線カムの工作を前提としておりズーミングによるピントの誤差はないとされ、当時の工作レベルとしてはかなり高度な工作が要求された。

 

同じく「ニューフェース診断室」では開放絞りで中央224本の解像力、平均でも148本とある。


ここで重要なのことが一つ、高度な工作とあるがNCカム切削機を使用して耕作されていることだ。

当時は対共産圏向けの「COCOM:ココム」が輸出制限として存在しNC切削機もココムの規制品であった。

つまり、当時は機械補正式のズームを作るのは並大抵のことではなかった。 


写りそのものも重要だけれども、所有欲はこのような物語性にも左右される。

ええ、左右された結果買いましたとも。

 

また、このレンズは大きく成功しその後すべてのメーカーでこのスタイルの開発へと駆り立てた、と記されている。


備忘録

発売時期 1973年12月

発売時価格 100,000円 (ケース・ラバーフード付き)

レンズ構成 10群10枚

絞り羽根枚数 8枚

最小絞り 22

最短撮影距離 0.3m(マクロ時)

最大撮影倍率 0.087倍

フィルター径 58mm

外形 69mmX120mm

重量 575g

専用フード W-69

 


作例


構成図